Zeta RC3 on FIVA Review

導入機種
CASIO CASSIOPEIA FIVA / MPC-102M62S

BootCPU:Cyrix MediaGXm at 233MHz
Memory:S.O.DIMM 256MB+32MB (*1 最大160MBを認識)
HDD:ATA 6GB
USB port x1
PCMCIA Type2 x1
IrDA port x1
Modem:56kbps

注*1)FIVAのサポートする最大値は96MB

About

#Install


FIVA には標準ではハードディスク以外の記憶デバイスがない。
専用のポートリプリケータが無ければ、PC カードか USB 接続機器を増設してのインストール作業となるが、それらが必ずしも動作するとは限らない。
運良く動作したとしても、決してそれがラッキーだとは思わない方が良いだろう。
なぜなら、FIVA でのスタンドアローンインストールはものすごく難しいからだ。

できれば、既に BeOS が稼動する PC に FIVA のハードディスクを移植し、インストールする方が良い。
母艦とする PC には自作のデスクトップがベストだろう。母艦の PC で全ての機能が使える必要はないが、最低限以下の箇所は動作した方がよい。

FIVA からハードディスクを取り外すには、以下の手順となる。

HDD 取り外し1)筐体下面手前側のビスを3本外す
2)キーボードパネルを外す
3)ハードディスクを留めているビスを2本外す
4)IDEコネクタを外す

ハードディスクを取り外したら、2.5" < - > 3.5"変換コネクタを装着し、母艦となる PC へ取り付ける。変換コネクタは概ね1千円前後である。

インストール用に Zeta RC3 の CD-ROM と BeOS R5 の CD-ROM(Personal Ediiton/Developer Edition/Max Edition 等なんでもよい)を用意しよう。

準備ができたら Zeta の CD-ROM をセットし、CD ブートすればインストーラーが起動する。

インストールする項目とインストール先のボリュームを指定しインストールしよう。
インストール項目は 標準/最少/カスタム から選択でき、標準では実験的なドライバ以外がインストールされる。
インストールはインストール項目とマシンスペックに依存するが、概ね30分から1時間程度だろう。
インストール終了間際にブートメニューのインストールの問い合わせがあるだけで、そこまでノンストップで作業が継続される。

作業が終了すると、CD を吐き出しリブートするので、一度 Zeta をハードディスクブートする。

起動すると NetPositive が開き ZetaManual が起動するが、これは初回起動時のみである。
ここでは読まずに作業を進めてしまおう。

母艦 PC で最低限設定をしておきたいのは、スクリーンの解像度と深度。
HLT の無効化とドライバのインストールである。

スクリーンの設定は Preferences の Screen(画面)より行う。

全ワークスペースを 800 x 600 8 Bits/Pixel にしよう。
周波数はデフォルトの 60 Hz で問題ない。
FIVA の液晶の限界値は 800 x 600 16 Bits/Pixel であるが、Zeta の場合は 8 Bits しか対応しておらず、これ以外の設定では表示ができない。
SafeMode から VESA モードで 800 x 600 8 Bits/Pixel で起動しても表示できないので、ここでやっておく必要がある。

HLT の無効化は /boot/home/config/settings/kernel/drivers にある kernel というテキストファイルを編集する。

ファイルをダブルクリック実行すれば StyledEdit が起動し、ファイルが表示されるだろう。
13 行目の # hlt disabled の # を削除し、ファイルを保存し終了する。
これは、FIVA のチップセットのバグのようで、マウスを動かしていないと他の処理が延滞してしまうのを回避する目的がある。
対策をしない状態で FIVA を起動してしまうと、この程度の作業も非常に骨の折れる作業になる。

続いて BeOS R5 の CD-ROM をセットしてマウントしよう。
もし、母艦の PC が他のデバイスをサポートしていれば CD-ROM にこだわることはない。

必要なファイルは
/boot/beos/system/add-ons/kernel/drivers/bin/gxm
/boot/beos/system/add-ons/kernel/drivers/dev/graphics/gxm (Symbolic Link)
の2つだけである。

これらを Zeta のボリュームへそのままコピーする。
これは FIVA で使われている MediaGXm のグラフィック機能(通常のビデオカードに相当する部分)のドライバとなるが、Dano/PhOS/Zeta といった R5.1 系のものには含まれていない。

ここまで、出来ていれば後の設定は FIVA で行うことにしよう。
もし、ネットワークや外部デバイスが使用できない状況であれば、そのまま母艦 PC で作業を行おう。

まだ内蔵デバイスとして使用できていないのは

だけのはずだ。

サウンドは Sound Blaster 16 互換なので SB16 Driver(シェアウェア)を適用する。
sb16-1.2-x86.pkg をダブルクリックしてインストールする。
インストール終了後 media_server を再起動すれば認識される。
(母艦 PC で作業しているなら media_server の再起動は不要)

FIVA はスピーカーを内蔵しており、ステレオで出力されている。
本体はモノラルスピーカーのようだが、ヘッドホンジャックがあるので、ヘッドホンを付ければ本体から切替り、ヘッドホンからきちんとステレオで音が出ているのを確認できた。
また、モノラル内蔵マイクもあるので録音したところ動作を確認できた。

モデムについては、現在プロバイダと契約をしていないため確認はしていなが、Vobis : BahnBoostar56K で良いはずだ。過去に R5 で動作確認したことがある。

IrDA については、使用できる機器を所有していないし、対応ドライバも存在しないと思う。
IRQ の消費を避けるため、IrDA(COM2) は BIOS で無効にすることを推奨する。

インストール自体は、FIVA が特殊な環境なため難易度があがってしまったが、Zeta のインストーラーは非常に簡単だ。

パーティションの分割については、まっさらなハードディスクであれば、DriveSetup で非常に簡単に行える。
今回は既にパーティション分割をしていたので、そういう前提で記事を書いているが、もし、デフォルトの M$-Windows98 SE がディスクの全てを締めていて、M$-Windows の再インストールをする気がないなら、M$-Windows 製品のパーティション分割ツールを使った方が良いだろう。
Zeta R1 には、パーティション分割ツール Paragon Partition Manager が付属予定となっており、日本語版は無いようだが、気にならない人は待っても良さそうだ。

過去の BeOS には Partition Magic LE(英語版)が付属していたが、Zeta に Paragon Partition Manager が付属することで、インストール上の問題は解決されるだろう。

ハードウェアサポートについても FIVA の場合、ビデオカード/サウンドドライバが別途必要であり、IrDA が使えないといった状況だったが、現在の標準的なハードウェアではないので、通常のハードウェアへのインストールでは問題にならないだろう。

また、RC3 では対応されていないが、インストールする上でハードウェア上障害となる 1GB 超メモリと 128GB 超ハードディスクは改善予定であり、BIOS によっては起動途中でリブートやフリーズしてしまう問題は既に対応済みである。

M$-Windows であっても Me や XP で支障があり(NT や 2k は更に支障があるだろう)、メーカーもサポート外としている FIVA でここまで動作するのであれば、上出来だろう。

#Hardware


R5 より改善された事項で最も良かったものは USB が使えることになったことだ。
増設機器となると PC カードしか使えなかったが、拡張性は格段に良くなった。

USB 機器については、以下の機器で動作確認を行い全て問題ない。

尚、USB ポートを有効にするためには BIOS 設定でUSB Keyboard Support を有効にする必要がある。
追加のドライバ等は全く必要なかった。

Hardware Open GL のサポートはまだのようだが、GLTeapot が R5 のころは 2.9fps であったものが、6.3fps *2も出ている。
(普通の PC で考えればものすごく遅いンですけどね)
注*2) デスクトップの方では、まだ R5 の方がよく回ってます。

APM Driver を導入することで、電源も落とせる。About にバッテリ状況が追加される。
About APM Driver 導入時
スタンバイ/サスペンド/ハイバネーションといったものはできないが、FIVA の場合導入しないと電源ボタンを長押し(20秒くらい)しないと切れないので、導入をお奨めする。
今回、バッテリがなく AC アダプタでの使用であったため標準バッテリでの稼働時間比較等は試せなかった。

起動時間については低スペックであるため、それなりに時間が掛かってしまうがハードディスクの読込み終了までで2分を切っており、私が仕事で使用しているノート PC Intel Cerelon 750MHz M$-Windows 2000 Professional の4分超というのよりは遥に優秀である。

#Software


RC3 では付属のアプリケーションの見直しがされており、RC2 までは入っていたものが消えたり、また、新しく追加されたものがある。

無くなってしまった主だったものとして

Infomanagement と Toys ディレクトリは無くなり、いくつかは他のディレクトリに移されて残ってはいるが、Calculators や Games ディレクトリは数がかなり減っており、Calculators は BDH-Calc だけとなっている。

R5 用のアプリケーションで入手可能なものであれば付属しなくてもよいが、Zeta 用に作成していたオリジナルのものが消えてしまったのは残念だ。

また、レジストが必要なものやデモ版がまだ多数同梱されている。

明らかに現在購入できる見込みのないものは、外すべきであると思うし、これらは全て Demos フォルダに入れるのか、過去の BeOS のように optional フォルダに入れておくのが筋ではないかと思う。

新たに追加されたものとして

大きく変更があったものとして

が挙げられるだろうか。

SampleStudio ProSampleStudio
音楽ファイルの編集・変換ツール
平準化やブースト、曲長の変更をしたり、周波数変更・リサンプリング等ができ、他のファイル形式に変換することができる。
フリー版はオープンソースだが、商用版となるであろう Pro 版が付属するようになった。
VST プラグインも初期状態から利用可能となっている。
スクリーンショットの About 画面が汚いのは 8bits で表示しているからであって、一般の環境ならもっときれいです。
JukeBoxJukeBox
音楽ファイルの管理・再生ツール
音楽ファイルの再生やアルバム管理といったことができる。
ZintrO のインターフェースに合わせ、大幅にデザインが変更されている。
このスクリーンショットは別のマシンで撮っている。
現状ではウィンドウのリサイズができないため、全体を表示させるためには 1024 x 768 以上でないといけない。

CifsMounter は RC2 では Network 設定のタブとして収められていたものが、独立したもので、Windows のファイル共有サービス CIFS(Common Internet File System) を利用することができる。

Financial は個人の資産管理(家計簿とはちょっと言い難い)ツールで オープンソースとなった BeFinancial を Locale Kit 対応にしたものだ。

Crypt-O-Matic はファイルの暗号化およびその解読ツールであり、BeOS にも Crypt ツールはいくつか存在しているが、新規に作成したようだ。

Preferences は RC2 まで PersonalSettings として Decor/Develop/Locale と 3つの設定切替ができたものが、Appearance/Backgrounds/Data Translation/Deskbar/Develop/File Types/Locale/Media/Mouse/Network/Screen/Sounds/USB/Virtual Memory と設定できる項目を増やして名称変更してきた。
まだ数個の OS 設定ツールは既存の BeOS と同じものが残っているが、これらもそのうち Preferences へ統合されることだろう。

RC3 ではムービーファイルの再生に既存の MediaPlayer が一部対応しなくなっている。
(MP3の音楽ファイルは再生できた)
既に yellowTAB から発表されているが、ネイティブコーデックを搭載した新 MediaPlayer が用意されており、R1 では改善されているだろう。

#Develop


BeOS の統合開発環境 BeIDE のバージョンアップが望めないため、Zeta の統合開発環境として期待されていた CodeLiege だが、RC3 で廃止されてしまった。
BeIDE 自体は残ってはいるが、日本語との相性は悪い。CodeLiege も一部日本語の取扱に問題のある部分もあったが、こちらは改善の見込みがあったので期待していたのだが、今後は MeTOS + Pe が主力になるらしい。

Zeta のベータリリース当時は gcc の切替ができ 2.94/2.95.3/3.2 が用意されていたが、RC3 ではRC2 同様 gcc 2.94 (BeOS R5 と同じ)だけとなっており、gcc の切替はできなくなってしまっている。代わりに RC2 以降では R5 のヘッダ関連と Zeta のヘッダ関連といったように R5 用のソースコードのビルドや Zeta 用のソースコードのビルドが切替で対応できるようになっている。

SampleCode も一通りの Kit のものが用意されている。

SDL/Python 等も含まれていて、個人的にはあと Ruby さえあればいい。

#総評


今までの RC がリリース候補という出来でなかったが、今回の RC3 でやっと RC にたどり着いたなという感じがする。
際立った不具合も見られず、よくまとまってきた感じだ。
もちろん、それなりに気になる不具合は多々あるのだが(笑

Tracker については RC2 で、ある程度 SVG アイコンの描画速度が改善されていたが、RC3 で更に速くなったような気がする。
Deskbar は Dockbert が切離され、Deskbar 設定が Preferences へ統合されたことにより、だいぶすっきりした。

Deskbarテスト中にこんな不具合に遭遇した。
Deskbar の設定ファイルを削除したり、Deskbar にリンクしているアプリケーションを外してみたり、フォントキャッシュを削除してみたり、Fast Launch を表示したり色々と悩んでしまった。
結局 Deskbar の位置を動かしたら元に戻った。
ただし、この現象は再現できていない。

PersonalSettings が Preferences に変更になり、OS の殆どの設定機能が統合化され Locale Kit 対応になったことにより、よりユーザビリティが向上したのではないかと思う。
一部 Locale Kit 関連で変更が出たため、日本語化されていない部分も見受けられるが、R1 リリースまでには、辞書の整備も完了することだろう。
この辺の変更で、他の最新 OS と比較しても外観に関しては見劣りしないのではないだろうか。

ドライバ類に関しては SANE のスキャナサポートや USB 対応機器の増加といったことで、既存の R5 ディストリビューションよりも一歩も二歩も進んだ感じだ。さらに yT とコミュニティによってハードウェアサポートは広がって行くだろうと期待できる。

Haru フォントの修正により、日本語の視認性も向上し、R5 Decor のタブが切れる現象も無くなっている。

今回インストールした FIVA 102S は A5 サイズのミニノート PC であり、この当時の CPU は同世代の Pentium MMX と総合的なパフォーマンス比較をすると、1〜2ランク下の製品と同等とみるのが通例であったと思う。特に MediaGXm ではグラフィック・サウンド処理も負担している点を考慮して2〜3ランク下となるようだ。実際にベンチマークをとった記事があり MediaGXm 180MHz で Pentium MMX 120〜133MHz 程度、266MHz で Pentium MMX 200MHz 程度といった結果があった。

このクラスのクロックというと 150/166/180/200/233MHz となるが、上記の考え方でいくと Pentium MMX 166〜180MHz 同等と思った方がよいだろう。

さすがにムービー再生やエンコーディング等のメディアの扱いは荷が重過ぎるが、このような低スペックなマシンでも Windows95 以降の M$ 製品よりは快適に動作している。

主な利用用途としては、やはりモバイルに使いたいところだ。
外出先での電子メールの送受信、チャット、メモ、アドレス管理、FTP アップ/ダウンロードといった用途なら難なくこなせるだろう。

暇つぶしに負荷の少ない、ボードゲームのようなものをしてもよいだろう。
SQLight を使った BeAccessible で DB を作成していれば、顧客データの持ち運びもできるだろうし、TimeZliner.Home でのスケジュール管理(データの更新共有は電子メールで行うグループウェアのようなもの)なども考えられる。
Firefox では重過ぎるので、やや速度が気になるが NetPositive での簡易ウェブ閲覧も可能だ。
また、MP3程度の再生であればポータブルプレーヤーとしての利用も可能だろう。

重量級の OS に着いていけなくなって、眠っているマシンの活用法として Zeta は唯一の選択肢となりうるのではないかと思う。


Last update: 2004/06/19


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